たびの連れ

今週の初めのある日、電車の中で私の向かい側に女性が座っていた。新宿に着くと、彼女は私側のドアから電車を降りた。私が彼女側のドアから電車を降りようとした時、私は彼女が座っていたところに濃紺色の布のような何かが落ちているのに気がついた。

仮に誰かが落とし物を忘れ物預かり所に届けたとしても、落とした駅で見つかる可能性は低いので、電車に何か忘れ物をするのは最悪だ。

いい人の私はそれをつかみ、彼女の後を追って反対側の出口から飛び出した。私は彼女がエスカレーターに乗る前に何とか追いつき、その何かしらを差し出した。慌てていた私はちゃんとした日本語の文をまとめることができず「ええと、これ、落とした」みたいなことを言った。

彼女は首を横に振って、私とその布製の何かしらを拒んだ。すでにそうであったが、それ以上ばかな外国人に見えないよう、私はそれをカバンに入れ歩き続けた。

会社に向かいながら、私はその布製の物が一体何なのだろうと思った。前述したが、それは紺色で布製のものだ。それには繊細な花模様と思われるピンクのアクセントが施してあった。それはほとんど円形だが、上部からいくつか平らなパーツが突き出していた。ポプリを入れる小袋かウサギのぬいぐるみかなと私は思った。

会社に到着後、私は自分のブース内に立ち、カバンからその布製の何かを取り出した。

丸められた足袋だった。

そう、電車の中で何かを無くすのは最悪だ。

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